環境をテーマにすると、環境破壊や環境保護さらに温暖化などが取り上げられるのではないでしょうか。しかし、この授業ではそのような問題はほとんど話題にしません。それは私たち人類とその周囲の環境との関係がどのように作り上げられているのか、そしてその関係がどのように変化しているかが一番の問題だと考えているからです。また今日話題にされる環境問題の多くは、人類とその環境の関係そのものに原因があるからです。
それをあきらかにするために、この授業は哲学、生物学、体育健康科学、土壌学、文化人類学という専門を異にする教員が毎時間出席して発言し共に授業を作り上げており、それがこの授業の特徴となっています。環境(主に自然環境)をあつかっていても、研究分野が異なると捉え方が全く違ってくることが少なくありません。時には専門の違いから議論にもなります。だから正解はないのです。履修学生には同じ事柄を問題にしていても、視点が違うことによる捉え方の違いを楽しんで欲しいと願っています。
授業では正解を求めることではなく、履修している学生一人一人が教員たちと一緒に考えることを重要視しています。そのために、毎回授業の終わりにリアクションペーパーを書いてもらい、そのうちのいくつかを次の授業の冒頭に紹介しながら、議論の入り口にしています。
複数の教員が議論しながら進めていくので、最初は戸惑う学生が多いかもしれません。全く反対の見方さえそこには出てくることがあります。議論の着地点が見つかるとは限りません。そういう正解のない議論を楽しめるようになれば、この世界をみる大きな力を獲得することになると担当の教員たちは信じています。
新型コロナウィルス(covid-19)の感染により我々は自然の領域にある身体をもつことを再確認させられました。2022年度の授業では、私たち自身の自然である身体を主発点として環境との関係について何が問題なのかを共に考えたいと思います。