昨年、大流行したものといえば『鬼滅の刃』でしょう。『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』は、コロナ禍にもかかわらず、興行収入が日本歴代第一位になりました。一方で、この漫画を小学生(特に低学年)などに見せていいものかどうかといったことも問題になりました。日本の社会に大きな影響を及ぼしたこの作品、舞台は大正時代(1912-1926年)の日本とのこと。そういえば、一般人の前で鬼殺隊は刀を持っていることを隠そうとしています。明治の初期に廃刀令が出されているので、そうしないと捕まってしまいます。また、蒸気機関車も登場します。これも明治期に日本では産業革命が起こり、大正時代には日本全国に鉄道網が敷かれ、各地で蒸気機関車が走っていました。世界的に見れば、大正時代というのは、第一次世界大戦(1914-1918年)を経験する時代です。日本もこれに連合国側として参加しました。日本に直接戦禍は及びませんでしたが、大戦は大戦景気という形で日本の発展に大きな影響を及ぼしました。そういえば、この物語は第一次世界大戦前? 大戦中? それとも大戦後のものかな? 漫画の中にそれを認識できるような断片を探ってみる…。うーん、ちょっとよくわからないな〜。
私の専門は西洋史ということもあり、歴史漫画好きです(『鬼滅の刃』は歴史漫画とはいえないかもしれませんが)。もちろん純粋に漫画自体も楽しみますが、上でも書いたように、時代背景を探りながら漫画を読んでいくのが、私の漫画の楽しみ方です。漫画の背景を知ると、その作品を2倍(あるいは3倍!)楽しめます!
『ヴェルサイユの薔薇』(フランス革命期の話)や『ヴィンランド・サガ』(中世のヴァイキングの話)、『チェーザレ』(ルネサンス期のイタリアで活躍したチェーザレ・ボルジアの話)、そして『キングダム』(秦の始皇帝の話)、この他にもたくさん歴史漫画はありますが、中には時代考証がしっかりなされ、歴史の再現度がかなり高い作品もあります。近年はこうした漫画が増えており、漫画は歴史を知るひとつのツールとなっています。是非、みなさんも歴史漫画を読んでみてください。そしてその背景も探ってみてください。
チェーザレ・ボルジアの肖像画。権謀術数に優れた人物とされます。当時イタリアには多くの国が併存していたのですが、それを次々に征服し、イタリア統一か!? といったときに死去してしまいます。