明星大学

全学共通教育委員会

つなぐ学び

つなぐブログ

バウムクーヘンの話(鶴田涼子)

  • 2021年06月01日

バウムクーヘンは日本でも馴染みのあるお菓子で、全国のスーパーで販売されています。バウムクーヘンという言葉は、ドイツ語で木を意味するバウムと、ケーキを意味するクーヘンという単語からできています。ケーキの断面が木の年輪に見えることからこの名前がついたと考えられています。バウムクーヘンはドイツ語ですが、ドイツでバウムクーヘンが売られているところを私はまだ見たことがありません。古くからチェコやハンガリーなど、ヨーロッパの各地で類似したお菓子やパンが作られていたそうです。

昔、バウムクーヘンはパンに似た生地で輪を作って身近にある枝に巻き付け、たき火で焼いて作られていました。16世紀には大きな生地を一気に棒に巻き、紐で縛り付けて焼く方法が考案されました。現在、専門店のバウムクーヘンに波打ったような溝が見られるのは、その形を模しているからだそうです。17世紀になると滑らかな生地を回転する芯にかけて焼く手法がとられるようになり、およそ18世紀には今日知られているような薄い層が生まれます。バウムクーヘン作りは家庭を離れ、マイスターの手による繊細な職人技となります。そんなバウムクーヘンと日本の繋がりは、第一次世界大戦中に中国のチンタオで日本軍の捕虜となった菓子職人カール・ユーハイム氏が、後に広島の物産陳列館で開催された展示即売会でバウムクーヘンを焼いたことに始まります。

ドイツでケーキを意味する単語は大きく分けて2つあります。クーヘンとトルテです。以前、友人にクーヘンとトルテはどのように使い分けられているの?と尋ねたことがあります。友人はちょっと考えてから、トルテはお店に売っている手の込んだお菓子だね、と答えてくれました。クーヘンは家で作られるものと話してくれたことを思い出し、その違いはケーキができあがるまでの工程と関係していることが分かりました。トルテは、日本でも人気のタルトと同じ語源であり、響きが似ているので固い食感を思い浮かべるかもしれませんが、実際は生クリームやチョコレート、フルーツなどを用いるデコレーションケーキです。一方、クーヘンはチーズやアプリコットなどの具材をあらかじめ生地に混ぜて作る焼き菓子です。ドイツの家庭ではお菓子やジャムがよく作られるのですが、作業に時間をかけることはなく、具材をすべて混ぜて焼いたり、冷やし固めるものがほとんどです。

こちらは季節限定のルバーブを使ったケーキで、上にはサクサクのメレンゲがのっています。形にはこだわらず、ざっくりと切り分けて食べます。

近年、日本でバウムクーヘンのほかにもドイツ語圏のお菓子を見かけるようになりました。シュトレンやレープクーヘン、ザッハートルテです。季節ごとに売り出されるコンビニスイーツでも並ぶことがありますので、見つけたらコーヒーのお供にいかがでしょうか。