これは私の敬愛する映画監督、黒澤明監督の言葉です。最後に作った映画「まあだだよ」で主人公である先生が子どもたちに語って聞かせているセリフにも使われており、黒澤監督自身の生き方の根幹にあったものです。そしてこれは私にとっても、これまでもこれからも、大切な座右の銘です。
私が明星大学からケンブリッジ大学に行かせていただいた1年間のことです。ケンブリッジ大学には綺羅星のごとく本当に優れた若者がたくさんいましたが、話していると意外にも、「本当は他にもっと行きたいところがあったのに・・・。」という思いをいつまでも抱えているような人も居ました。驚きました。こんなにいい大学に来ていて、そんな劣等感を持っているのか・・と。そして、そんな思いでずっといたらせっかくの4年間が充実しないだろう・・とも感じていました。
ここで、私が明星大学の再履修クラスとで出会った3人の学生さんのことを話しましょう。
一人目Aくんは、水泳の池江璃花子選手と同じ脳腫瘍で、お医者さんから「いつまでの命かわからない。」と言われつつ、中学高校と長期入院を繰り返しては、両親や看護婦さんたちに支えられて学校を続けてきたそうで、「僕の夢は明星の大学院でやりたい事があるので、頑張って入りたいから一生懸命勉強しています。」ということでした。
授業後にそんなことを話してくれた日、私は感動して、一緒に食事をしながらお互いのことを語り合ったことを覚えています。「こんな研究がしたいんです。」といきいき実験が目の前に浮かぶような具体的に話してくれました。それから2年たったある日、私のメールに「先生、合格しました!」との知らせが入ってきて一緒に喜び合いました。その後、理工学部で彼がついている先生にお聞きしても「がんばっていますよ!」とのこと。がっちりと心の通い合った関係で研究が進んでいるようすで安心するとともに、改めて、彼が言っていた「いつ、”死”というその時が降りかかってくるかわからないんですが、僕はやりたいことをやっていきたい。」という言葉を思い出し、かみしめたことでした。
またBさんは、学期最後の授業の時に、たまたままだ誰も生成AIのことに関心がない頃にもかかわらず、クラスで一人だけ生成AIについて知っていたので、「この学期が終わったら、一緒に勉強会をしよう。」ということになり、定期的に頻繁に会うようになったのですが、ちゃんと夢を持っていて、それはパソコンを駆使するウェブデザイナーとなることでした。自分の知らない新しい分野について、腕を磨けそうなセミナーを見つけてきては、長期間のセミナーでもアルバイト代を使って受けて、それがどんなに有意義で楽しかったか報告してくれました。「嬉々として学ぶとはこういうことだな。」と私の方が学んでばかりでした。
またCくんとは、私が学びたい分野のことについて、彼がたまたま詳しかったこともあり、授業後によく話していたのですが、それももう3年も前のことで、実は私は苗字も失念してしまっていました。ところが今年の卒業式に、彼はわざわざ私を探して来てくれたのです。ニコニコと笑顔で「先生、会いたかったです!」と言ってくれた時はどんなにうれしかったことか!たったあれだけの出会いでも、楽しかった思い出、出会えたという歓びは、人の心にずっと残るのだということを改めて感じさせてもらった思いでした。それなのに、今後もずっと繋がりたいと思ってアドレスをメモする時、私は名前が言えずに「えっと・・・名前は・・」と彼に聞いてしまい、ものすごく申し訳なかった。自分が名前を忘れてることが、相手に伝わってしまうことで「ごめんなさい!」と感じる思いは、きっと全ての先生が感じたことのある感情だと思います。でもCくんは、やはりニコニコしながら、自分で書いてくれました。これからまた私たちのやり取りがまた始まるわけです。卒業式というのは、自分の4年間を総括するとともに新たなスタートが切られる、そのマイルストーンであることを実感しました。
次に、ゼミで出会った学生さんのことも。私はゼミを持つのが大好きです。前任校では一学年で30人近いゼミ生。論文はもとより文化祭でビデオドラマ制作&上映会をしたりもしてずいぶん楽しかった。今も集まるので、私も名古屋まで行き、どうしても行けないときはスマホで顔と声だけの参加。一方明星大学では、所属部署の関係もあって前任校に比べるとぐっと少数で、八王子セミナーハウスで合宿したりしてます。今年は英語コースだけでなく、他のコースの学生さんも来てくれて、多様性がある面白い展開になっています。明星大学の理学部の先生との共著があるほど、毎日毎日実験と作業に明け暮れつつ、懸命に目指す大学院に進もうとしている学生さん。小学校でいい先生になるために、理科はもちろんのこと国語でも英語でもいい授業を目指して、真剣にたくさんの本を読みつつ、迫る採用試験の準備に夏休みも没頭している学生さんと様々です。
また今年の卒業生には、バイト先での英語教師の経験と、バレーボール指導で発揮しているコーチングのスキルを統合した、面白い卒業論文を仕上げる一方、夏休み中はバレーボールのセミプロに選抜され福岡まで行って過酷で貴重な体験をして来た人がいます。バレーボールに生涯をかけたいとのこと。寝ても覚めてもバレーのことで頭がいっぱいでした。また、まだゼミに入る学年ではありませんが、「デザインで身を立てたい。でも世界で活躍するためにも英語の勉強をものすごくしたいんです!」と、長期休暇に私の住む町まで来て学んでいる学生さんもいます。
このように、ケンブリッジ大学ではないけれど、明星大学には、やりたいことを持っている学生さんがたくさんいることを私は身をもって感じています。これこそが一番価値あることだと思います。「自分が縁あって居るその場で自分はどんな充実した4年間を過ごすのか。そのプロセスは楽しくてわくわくしているか。そしてその行動を通して自分は確実に”自分のなりたい自分”へと成長しているか。」それが大切なのだと思います。紹介したこれらの明星の学生さんは、それを見事にやってのけています。
皆さんが身をおくことになったこの明星大学。その明星大学で、どうぞ皆さん、明るい星のようにキラキラ輝きながら学生生活を送ってください。大好きなことを見つけて一生懸命に取り組んでください。きっと皆さんは一流の人になれるでしょう。