明星大学

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活動報告

片山文保教授の最終講義を動画にて公開します。

  • 2021年03月30日
  • 教育・研究活動

本委員会所属であり哲学・フランス現代思想・精神分析を専門とする片山文保先生が、2020年度末に退職されます。本委員会では、2021年3月11日にZoomにおいて最終講義を行って頂きました。コロナ禍のため対面での講義が叶わず、委員会内でのオンライン開催となったことから、ここに最終講義の動画を掲載し、皆様に公開いたします。

最終講義の主題および概要

主題:欲望とナルシシズム

概要:精神分析への案内として、ナルシシズムと無意識的欲望との関わりをとり挙げる。

人は自我として、誰もが多かれ少なかれナルシスであるが、自分がナルシスであることを知っているか否かによって、その人の生き方は大きく異なるだろう。ナルシスは、自己の絶対化を求めて、自我における欠如・外傷としての「他者」を無視・排除しようと血眼になる。他人との比較・競争に日々の時間を費やし、果てには戦争にまで至るのは、自己を知らぬナルシスである。精神分析は私たちにとって、自分がいかにナルシスであるかを知るためのひとつの有力な手がかりになるだろう。

この「最終講義」では、フロイトのいくつかの著作から、無意識的な欲望とナルシシズムのあり方が端的に窺える事例あるいは議論を三つ取り挙げて紹介・説明する:1) ある女性患者の既視体験(「日常生活の精神病理学」) 2) プラトン『饗宴』中のアリストファネスによる恋愛寓話(「快原理の彼岸」) 3) 一歳半男児の糸巻き遊び(「快原理の彼岸」)。まず、これら三つのフロイトの議論から、欲望がその本質においてナルシシズムを含むことを示し、次いで、この事実をカラヴァッジオの「ナルキッソス」の細部表現上に確認することで話を締めくくる。

片山文保先生略歴

慶應義塾大学大学院修士課程修了(フランス文学専攻)。フランス国立ニース大学哲学・思想史科博士課程修了(哲学博士)。1999年、本学一般教育外国語助教授として着任。人文学部全学共通教育教授を経た後、教育学部教育学科教授として、2021年3月、本学を定年退職。専門はフランス現代思想・精神分析。特にフロイトとジャック・ラカンの研究を専門とし、ラカンに関しては、『テレヴィジオン』(講談社学術文庫)、『アンコール』(講談社選書メチエ)の訳業がある(いずれも共訳)。