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大学時代に単位を落とした話(藤原愛)

  • 2023年04月01日

1年生の皆さん、入学おめでとうございます。2年生以上の皆さん、今年度も明星大学での学びをさらに深めていきましょう。

2023年3月29日、StarWayより撮影

2021年4月1日に全学共通教育委員会のホームページが公開され、その際に「つなぐブログ」の初回を担当してからはや2年。前回は自分の大学時代の成績表を引っ張り出して、凡人な成績を公開した私ですが、担当2回目となる今回は、自分のその後の人生を大きく変えた「単位を落とした」話をしようと思います。

え?新学期早々、縁起でもないって?いやいや、単位が取れなかった場合、その学び直しってとても大事なんですよ、と大学時代に実感したお話です。単位を落としたからって、立ち止まっているわけにもいかないじゃないですか。

私の専攻は「朝鮮語」でした(明星大学では「韓国語」と呼びますが、私の出身大学は「朝鮮語」という呼称を使用しています)。いまでこそK-popや韓流ドラマの影響もあり、学生に非常に人気のある外国語ですが、私が大学に入学した当時は、今のような人気は「韓国語・朝鮮語」にはありませんでした。そもそも英語(またはスペイン語)を学びたかったのに、「センター試験」の点数が足りなかった私は、自分のやりたいことよりも「受かればいいや」を優先して、朝鮮語を選ぶという、今考えればお世話になった先生方に申し訳ないような動機で大学に入学しました。

朝鮮語を専攻するかたわら、第二外国語として英語を履修しました。一応、将来のことを考え、外国語(英語・朝鮮語)の教員免許状取得に向けて学ぶ日々。大学2年の前期、私は初めて単位を落とすのです。その科目名は忘れもしない「英語科教育法I」。言わずと知れた、免許取得のための必修科目です。

それでは、当時の私の様子を覗いてみましょう。

「英語科教育法I」の授業は、英語の教員免許を目指す学生が多かったこともあり、履修者100名ほどが大教室に着席していた。そこに現れた教員はメガネをかけたすらっとした若手(といっても30代)。小気味良い口調で授業をそつなく進めていく。一部学生はその先生をカーミット(というカエルのキャラクタ)に似ていると言っていた。確かに似ている。ためになる講義だが、淡々と進んでいくその授業は感銘をうける間もなく、あっという間に前期末試験の時期を迎える。

カーミット(KERMIT)は著作権の問題があるので、描いてみました。カエルが苦手な方ゴメンなさい。

試験勉強はした「つもり」でいた。試験について言えば、「できた」という実感はなかったが、「できなかった」という実感もなかった。単位が取れれば「可」(明星大学でいうところの「C」)でもいいや。しかし、そんな私に単位をくれるほど、この教員は甘くはなかった。「英語科教育法I」の成績は、見事に人生初の「不可」をくらい、後期に再履修することとなる。

彼は自らが単位を落としたばかりの学生20名ほどと、後期に再び対面することになる。学生だって単位を落とされた相手を目の前にすればいい気はしない。そんな教員と学生の関係性であるため、後期の初回授業は緊張感漂う、重々しい雰囲気で始まった。しかし、授業が進むうちに、大教室での授業では見えてこなかった、教員のユーモア溢れる人柄や、穏やかな性格、圧倒的な知識量、海外の大学院の経験談、穏和な笑顔を目の前にし、前期とは別人かのような印象を受けた。回を重ねるごとに、「この授業は面白い…!」「外国語教授法は深い」「もっともっと学びたい」「先生のようになりたい!」と思うようになった。

そして、3年になるときのゼミ選択で私と、その再履修クラスにいた友人たちは、このN先生の「外国語教授法」のゼミを選ぶのである。その後の私は、N先生のゼミにいた先輩や大学院生と交流を深め、知らないことを自分で調べてみることの楽しさを知り、大学院でもN先生の研究室に所属して、学び続けることとなる。

そして、現在に至るのです。

そのN先生も数年前に還暦を迎えられました。新宿の某ホテルで開かれたお祝いの会には、多くのゼミ卒業生が集い、久しぶりに会うN先生は、当時とあまり変わらずお肌もぴちぴちで、ギャグのセンスも相変わらずでした。大学2年生のあのとき、中途半端に勉強をし、自分の能力を過信して試験をなめていた私に対し、「英語科教育法I」の単位を落としてくれた先生には、今となっては感謝しかありません。

ということで、単位を落としていなかったら、私のその後の研究者人生はなかったと言っていいでしょう。正直なところ、成績が「不可」となった当時の私は、プライドも傷つきましたし、「なんで?!」という怒りというか疑問というか複雑な感情も湧き、焦りや不安を感じたことを今でも覚えています。しかしながら結果として、しっかりと学び直したことが、その後の私の研究の礎となったのです。「不可」だったからと不貞腐れて、教員免許状を諦めることもできたかもしれませんが、そうしなかったことで今があると思っています。

みなさんも、大学生活の中で、勉学をはじめ、人間関係や部活動、思い通りにいかないこともたくさんあると思います。しかし、「転んでもただでは起きない」精神で、そこから学びを得て、次に進んでください。そして何よりも、大学での友人そして教員、職員との出会いを大切にしてください。きっとあなたの力になってくれる人に出会えます。みなさんの「これから」を応援する意味を込めて、私の「大学時代に単位を落とした話」を贈ります。