明星大学

全学共通教育委員会

つなぐ学び

つなぐブログ

ノルウェーの憲法記念日と「幸せ」について(土野瑞穂)

  • 2023年06月01日

私は現在(2023年5月)、研究休暇を取得してノルウェーの首都オスロで生活しています。去る5月17日は、ノルウェーの憲法記念日でした。そこでノルウェー最大のイベントの一つである「憲法記念日」と、そこから感じた「幸せ」についてお話したいと思います。

まずはノルウェーの簡単な歴史を紹介します。ノルウェーは長らくデンマークの支配下にありました。ナポレオン戦争でデンマークが敗北し、1814年にノルウェーがスウェーデンに割譲されることが決まると、ノルウェーは独自の憲法を作りました。スウェーデンはノルウェーが独自の政府と議会を持つことを認めました。ノルウェーが完全にスウェーデンから独立したのは1905年のことですが、憲法を制定し独立を宣言した日として、5月17日はノルウェーでは大切な日とされています。この日は、「シッテンデ マイ(17. Mai)」(「5月17日」の意)と呼ばれています。

さてこの日、私はノルウェー人の友人たちと一緒に過ごすことになっていました。幸いにも快晴でした(雪が降った年もあったようです。5月なのに!)。友人宅へ向かう道中、周囲の光景に驚きました。まずブーナッドというノルウェーの美しい民族衣装を着た男女に出会いました。そこで「写真を撮ってくれないか」と頼まれ、喜んで撮影しました。そして地下鉄の駅に向かうと、ほぼすべての人々がノルウェー国旗を手に持ち、ブーナッドあるいはスーツ(男性の場合)でドレスアップしていました。ノルウェー人の愛国心の強さを感じました。

憲法記念日に友人たちが持ち寄った食べ物(左)と、「パブロバ」と呼ばれるメレンゲのケーキ(右)

友人宅で各々持ち寄った食べ物と、この日に食べる特別なメレンゲのケーキ「パブロバ」を楽しんだ後で、皆でパレートを見に行きました。パレードはノルウェー全国で開催されますが、オスロの場合は、オスロ中央駅から王宮までおよそ2キロメートル続くメイン通りの「カール・ヨハン通り」で行われます。オスロの人口は約71万(東京の人口は約1400万。ちなみにノルウェー全体の人口は約550万)です。普段は静かな街ですが、この日に限っては多くの人でごった返していました。

カール・ヨハン通りを歩く子どもたち(左)とブーナッドというノルウェーの民族衣装を着た女性と子ども(右)

パレードの中心となるのは、主に子どもたちの行進です。学校や地域のコミュニティ単位でチームや楽団を組んで歩いていました。ノルウェーには日本でいう「子どもの日」がありません。その代わりにノルウェーの場合、5月17日が子どもの祭典として位置づけられているようです。パレードに参加している子どもたちや大人の人種は様々で、移民を多く受け入れてきたノルウェー社会の多様性を垣間見ることができました。

まだノルウェーに来て間もないためノルウェー社会に関する十分な知識がありませんが、この憲法記念日を通じて考えさせられたことの一つは、「幸せ」についてです。ノルウェーの場合、人々の愛国心の強さは、国民の幸福度の高さと関係しているかもしれません。ノルウェーは世界幸福度ランキング第7位(2023年)の国です。それに対し日本は47位。つい先日広島でG7サミットが開催されましたが、G7の中で日本の幸福度は最下位です。もちろん幸福度というのは主観的なものなので単純な比較はできませんし、ノルウェー社会に問題がないわけではありません。ただ、両国の幸福度ランキングの差はどのような要因によるものなのでしょうか? 「民主主義」「福祉政策」「ジェンダー平等」「天然資源」(ノルウェーは2021年の世界石油輸出国ランキング第7位)…いろいろと要因がありそうです。これからじっくり観察してみたいと思います。

最後にノルウェーを含む北欧の「幸せ」、あるいは「幸せ」というものをどう考えるかについて、お薦めの本とドキュメンタリー映画をご紹介します。よかったらご覧になってみてください。

①あぶみ あさき著『北欧の幸せな社会のつくり方―10代からの政治と選挙』かもがわ書店、2020年.
②映画「happy -しあわせを探すあなたへ」監督:ロコ・ベリッチ、制作国:アメリカ、制作年:2012年.
③映画「幸せの経済学」監督:ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ、スティーブン・ゴーリック、ジョン・ページ、制作国:アメリカ、ニカラグア、フランス、ドイツ、イギリス、オーストラリア、インド、タイ、日本、中国、制作年:2010年.